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 インターネット調査入門


INDEX

1 調査を行う前の注意点

インターネットで多くのサイトがアンケート調査を行っているが、これで何を調べようとしているのかがわかりづらく、あるいは変にアンケート制作者の意図が見えたりして、答えが必ずしも有意な結果にならないのではないかというものも多い。
アンケートの調査票は、経験から誰でも簡単にできそうだと思われがちだが、そこにもルールや注意すべき点がある。それは目的にもよるし、導き出したい結果にもよる。
また、インターネット上での調査はどうしてもアンケートが多くなるが、必ずしもアンケートだけではなく、使い方によってはこれまで以上に便利な調査用メディアとして利用できる。
インターネット調査において注意すべき点を挙げ、調査方法や調査の分析方法について説明していきたい。


1.1 何のための調査なのかを明確に

まず何を知ろうとして調査しているのか、調査目的を明確にすることである。
アンケートを使ってサイト訪問者の属性を知るだけならそれほど注意すべきことはない。
しかし、その先には当然、それを元に新しいウェブビジネス展開や新しい製品を企画・開発したりするという目的があるはずだ。結果を見て「なるほど、こういう人たちが来ているんだね」と納得するだけの調査に大したお金をかける必要はない。
更に「報告書が貧弱なのでとりあえず調べてみました」という調査の為の調査は論外である。
何を知ろうとしているのか、本当に必要なデータは何なのかを明確にしてから調査に望むべきであることを心得ておこう。


1.2 仮説を立てよう

例えばウェブでの新ビジネスを企画しているなら、その企画が成功し、利益が上がることを前提としているはずで、その思いこみや思惑が本当なのか、実際の利用(想定)者の意見を聞き、正しい仮説なのかを検討する必要があるから調査を行うわけである。
あるいは現状のターゲットの不満・問題点を洗い出して、わかった問題点を解決する機能・ソリューションを提供する製品を開発したいという場合もあるだろう。
ただし、この仮説は、何の前提もなく生まれるはずがないし、想起者の思いこみだけでは、独りよがりの製品になってしまい、調査結果の反映もされずにムダになる可能性が高い。
すでに方向性が大まかに定まった段階で、その仮説をあらためて検証し、より深く絞り込んだ対策の検討や開発ステージへと進むことができるのである。


1.3 セカンダリデータの収集

目的と仮説を持って調査を行い、明確にするデータをプライマリ(第1の)データと呼ぶのに対して、直接の解ではないものの、目的や仮説の基礎を固める情報がセカンダリ(第2の)データで、いわゆるバックデータである。
このデータに関しては、新聞雑誌に数多く発表されているし、インターネット上でも見かけることができる。多くは官公庁による白書・統計データや民間調査機関の調査データ、ニュースリリースにより新聞雑誌に載った一般企業の調査結果などである。
ただし、たいていの場合、対象が広かったり、質問内容が一般的になるのは否めない。調査にはお金がかかるし、公共系データは汎用性を求め、調査機関や企業が実施したものの多くは結果のサマリー(概要)で、もっと深い部分・詳細な結果はオープンにしない場合が多い。
ただ、これらを収集し、統合して分析した上で、更に深く知りたい部分・仮説を実証したいポイントを見いだすのだ。


1.4 インターネット調査のメリットとバイアス

インターネットで調査を行う場合、既存の調査方法とは当然いろいろな点で異なる。
以下のようなメリットとバイアスに注意しなければならない。

1.4.1 メリット

・送付回収などのコストを大きく削減可能
・主要都市レベルで全国規模の調査が可能
・広く告知でき、調査対象者(サンプル)の手間が軽減
・デジタルデータで回答されるので加工しやすい
・サンプル属性をある程度絞り込みやすい
・面と向かって/時間制限の中で回答する必要がない気軽さがある
・見せる方法が多様(画像・音声・動画など)

1.4.2 バイアス

・サンプルがインターネット利用者という属性がある
(所得・業種・性差・年齢幅・パソコン利用)
・更にサンプルを募集する場所(サイト)によっても属性に偏りが出る可能性あり
・属性をごまかしやすい(匿名性)ので謝礼目的で偽りや多重回答の恐れ


1.5 もっとも知りたいポイントは

上記のように、まず大きく調査目的を持ち、セカンダリデータを分析することで最初の仮説を何度も検証しながら修正していくことである。その上で、他の調査では明らかになっていないが、検証し尽くした仮説から導き出したいポイントがどこなのかを明確にしてほしい。

1.5.1 事例)あるインターネット用ソフトを開発し、オンライン販売しようという企画

セカンダリデータで一般的な部分、つまり競合ソフトの価格やオンラインショッピングの経験、決済方法を調べた上で、現在想定しているものを仮説として、それを元に質問や選択肢が浮かび上がってくる。
例えば以下のようなポイントについての仮説を明確にし、知りたいポイントがわかった時点で、実施への具体的な検討が始められるのである。

1.5.1.1 調査ポイントサンプル

1)今使っているソフトの不満点
現在企画中のソフトの仕様を挙げ、競合製品が持っていない機能・不便な点=ユーザの望んでいる機能がカバーされているかどうかを明確にする

2)適正な価格はどのあたりか
現在パッケージの標準価格やオンラインソフトの価格を調べ、同時にROIや損益分岐を調べた上で設定した価格が適正か・ユーザに受け入れられるかを確認する

3)オンラインで購入したいか・経験はあるか
オンラインでソフトを購入することへの抵抗感や不便な点をチェックし、パッケージ販売をとらなくて本当によいのかを試算する


2 ネット調査の実施方法

ネット調査=アンケートと思われがちだが、もちろんそれだけではない。また、工夫や技術の進歩でその手法もどんどん広がりを見せていく。現状行われている調査方法とその実施に際しての注意事項などを挙げていこう。


2.1 調査方法のいろいろ

インターネットの調査というと、フォームによるアンケートがほとんどであるが、以下のように既存の調査方法をネット上で再現する方法も実施されている。
それぞれの特性を利用し、必要なら組み合わせて利用するとよいだろう。

2.1.1 アンケート形式

完全に個を対象に、主に選択肢から定量的なデータを収集する。
有意な回答数は、その内容にもよるが、サンプルにネット(パソコン)ユーザという属性があり、それに即した調査であれば、定性型の調査ならサンプル数100以上、一般的な定量調査なら最低200、500以上あるのが望ましい。
もしネットユーザ以外の一般的な調査も行えるなら、同じ設問でその比較を行うことにより、属性による違いをより明確にしやすい。
質問項目はできるだけ簡潔に(画面上では紙以上にたくさん読みたくない)して、プリントしてA4で2ページ以内に収まるようにすることである。
紙よりも書き込む手間を少なく(クリックして行くだけで済む)することで回答しやすくなる。
告知して、最低1週間から1ヶ月程度の間に集計を取る形になる。

2.1.2 ディスカッション形式

ネットディスカッションの場合、掲示板などで質問を設置して、調査対象にそれを見てもらい、それに対する意見・回答を文章で書き込むという方法になる。結果は定性的なもので、アイデアジェネレーション・ブレーンストーミング的な利用が可能。
この場合、対象者は10人程度必要で、なおかつステップを踏んで進める必要があるので、実施期間は1週間から2週間となる。こうすることで、同時にアクセスする必要がなく、しかも他の人の意見を見てアイデアを膨らますことができる。面と向かってではない故に、引っ込み思案であったり、他の人の意見に左右されやすい場合には特に画期的・突飛な意見やアイデアを引き出すこともできる。
ただし、それなりに掲示板などの準備が必要で、1人あたりの謝礼も高くなる。なおかつディスカッションの話題が横道にそれたり、参加していない人に意見を促すなど、システム側にも担当者・ガイド役が必要。

2.1.3 インタビュー形式

これはネット上ではあまり行われないが、特性としては1対1で行う調査であり、深く意見を聞き出すことができる。方法としてはメールもしくはチャット型のシステムを用いることになるだろう。
事前にブラウザで画像などを見てもらってそれに対する意見をもらうなどのしくみを利用できる。
他の人に自分の意見を聞かれない気安さから、深くつっこんで意見を聞けるものの、インタビュアーにアイデアを引き出すノウハウや能力が求められる。

2.1.4 定型レポート形式・感想文形式

インタビューと同様だが、じっくり考えさせるタイプの調査である。
ウェブブラウザでフォームに記入してもらう形式か、定型のファイル(ワードなど)に記入してメールで送ってもらうなどの方法を取る。
日常の断片を切り出して、それを報告してもらうことで習性・習慣などを調査する方法である。例えば、何日かの行動(例えば何時から何時までどんなテレビ/ウェブサイトを見て回ったか、など)をレポートしてもらったり、といった定型レポーティング型の調査を行える。
あるいは、あるCFイメージやパッケージデザインをブラウザ上で見せて、それに対する感想(冷たい感じ・不快・威厳・伝統など)を評価・記入する、といった感性調査・動機調査などを行うのにも適している。
統計的な部分ではデータの編集に手間取る程度であるが、感性などを計る場合は、設問の設定自体に心理学的な要素も絡み、専門家の意見が必要となるだろう。


2.2 調査方法と対象者リクルーティング

調査には当然回答してもらう調査対象者(サンプル)を募る必要がある。
これまでのペーパーベースの調査では、街頭インタビュー調査・名簿からの郵送調査・ランダムな電話調査などがあったが、有効回答数を得る為にはその数倍〜10数倍のアプローチが必要である。(10%回答があれば成功)
しかしインターネットではその無駄な分のコストをバナー広告と謝礼(賞品・景品)にかけたり、懸賞リンクサイトに登録することで、ユーザを集めることができる。
ただし、バナー広告を打つ場所の選定も重要である。新聞サイトやサーチエンジンのサイトがもっとも一般性があるが、バナー広告費が高くなりすぎる。ただし共同で行う(調査結果の一部を公開したり結果を共有する)ようなサイトもあるので探してみるといいだろう。また、回答者を会員登録している調査団体もある。属性が明確なのでムダのない情報が得られる。

2.2.1 アンケート・懸賞告知場所・調査団体

→ メール&チャットクラブ → iMiホームページ → とくとくページ → Chance It! → 懸賞金プレゼント大王 → Coice

2.2.2 対象者を限定するメリットデメリット

インターネットで調査を行う際に、すでに属性のバイアスがかかっているので、そのターゲットが調査対象であれば、的はずれな回答を少なくすることができる。
また、ペーパー記入が面倒・面談は思ったことがいえないという回答者でも、ウェブ上では熱心に書き込んでくれるユーザも多いので、マニア層やヘビーユーザなどを対象とする場合には楽な部分もある。
ただし、あまり絞り込むと対象者が少なくなってしまったり、偏ってしまう・あるいは謝礼目的で嘘の(匿名性を悪用した)回答をしてしまう可能性もある。
既存のネットユーザ属性をよく分析し、その中でどの程度の人をターゲットとするのかを明確にしておく必要がある。

2.2.3 定量・定性の2段階調査

母数の内の何パーセントを占めるか、あるいは5点満点で平均どの程度点数を付けているかといった数量によるデータ集計は、数の多い少ないをグラフで明確にしやすいが、どうしても「大多数」の意見になりがちである。逆に1人1人が思っていることが明確になる定性調査は、数値化しにくく、集計もしにくいが、個の声が聞こえてくる。それぞれの特長を生かし、両方を行うことが望ましい。
もちろん、アンケート調査のフリーアンサーでもいいのだが、もっと深く踏み込むにはグループインタビューなどの方法も採ることができるだろう。

2.2.3.1 アンケートによる定量調査

アンケートは気軽に答えられるので、不特定多数のネットユーザを対象にできる。
できる限り一般の人が集まるサイトで告知したり、懸賞サイトリンク集などに登録することで手軽に募集することが可能。
ただし、あくまでも結果は数値の大小になってしまい、結果だけでは漠然とした多数決的な意見にとどまってしまう。それだけに設問の仕方や結果の見方が重要になる。

2.2.3.2 アンケートとインタビューによる定性調査

アンケート内のコメント記入(フリーアンサー)型である程度の定性調査が可能であるが、あまり多いといやがられたり、無回答という場合も多いので、本格的に行うにはインタビューやディスカッションでつっこんだ調査を行うことが望ましい。
その場合、有識者や専門家を対象に選べればよいが、一般の利用者の中からということであれば、懸賞サイトリンク集などできちんと絞り込んだターゲットをピックアップするという方法もある。ただしそれでは匿名ゆえに実施してみたら想定していたのとは違っていたということもありうる。
最初のアンケート調査の回答者の中から、属性を絞り込んだり、特に意見やアイデアの豊かな人をピックアップしてセカンドステージに誘うという方法も有効だろう。


2.3 調査票作成時の注意点

アンケートはよく見かけるだけに、調査票を想像だけで安直に作ってしまいがちだが、ありきたりの質問や、何を聞きたいのかが曖昧な質問、意味のない(その他・不明の回答率の高い)選択肢が多くなってしまう場合が多い。
ここでは質問票・調査票作成時の注意点やコツを挙げていこう。

2.3.1 回答種類を間違えない

シングルアンサー(単一回答)にするのか、マルチアンサー(複数回答)にするのか、順位付けをするのか、評価尺度型(とてもよい〜とても悪い)にするのか、それぞれの回答方法の特性を吟味して最適な回答方法を選択しなければならない。
特にマルチアンサー形式は、1つも選択肢がない・あるいは全部にチェックされるような回答が多くては問題があるといえる。

2.3.1.1 シングルアンサー

回答が決まり切ったもののみプルダウン型(性別、年齢層など)
選択肢全体を見渡して選択させるものは必ずラジオボタン型

2.3.1.2 マルチアンサー

いくつでもよい回答はチェックボックス型
順位を問う場合や「3つまで」という限定には番号記入型にして、更に正確を期す為に入力値のチェック(無効回答・空欄でないか)をCGIなどで行う必要がある

2.3.1.3 評価尺度型回答

「とてもよい」「よい」「ふつう」「わるい」「とても悪い」などはプルダウン型にして、VALUEの値をポイント(例えば5点〜1点など)にしておくと後で加重平均など計算しやすい。

2.3.2 仮説を表に出さないようプリテストを

こう言わせたい・回答させたいという設計者の意図を見せた時点でその調査の有意性が薄れる。質問者の言い回し・アンケートの選択肢はほんの一言で回答者の姿勢や回答がずいぶん変わってしまう。仮説はあくまでも仮の説であり、そこへ誘導してしまっては調査の意味がない。
また、イメージや感想を聞く際には、調査対象が「答えにくい」「選択肢にない」という項目も多い。あるいは人によって反感やひがみ意識などを持たせないような設計を心がけることである。
ある程度の骨子ができた時点で、まず身近な人にテストして、これ以外に聞くべきこと・選択肢はないのかを確認することである。
また、集計結果を想定し、集計時に曖昧にならないか、結論に導けるかどうかを検討してみて欲しい。

2.3.3 最重要点を聞く為のテクニック

誤差や曖昧さをなくし、本当に知りたい部分を調べるためのポイントをリストアップしていこう。

2.3.3.1 まず簡単な質問から

最初から考え込んでしまうような質問は回答者に「面倒だな」と思わせてしまい、素直な回答・スムーズな回答を得られなくなってしまう。最初は表層部分を、徐々にポイントを絞り込んでいくことが大切である。

2.3.3.2 数を絞り込むこと

あまりに質問項目が多いと回答する気がなくなってしまう。全体でどの程度なのかをきちんと見せた方がよい。1ページでスクロールしていく場合にはプリントしてA4で2ページ前後(フルスクロールして3回程度)にとどめることである。もし1画面で「次のページ」と進めていく場合も、先が見えないといつまで続くのか不安になって途中でやめてしまう場合もあるので、「1/5ページ」という形にした方がよいだろう。

2.3.3.3 質問は具体的に・選択肢はわかりやすく

選択肢の選定も重要である。それぞれが異なっていて、一言でわかりやすく、なおかつ具体的である必要がある。
選択肢を簡潔にしようとして省略してみたものの、他の選択肢と重なったり、人によって受け取り方が違ったりする場合もある。
事前に周辺でプレテストを行い、質問の意向が正しく伝わっているのか、それ以外の選択肢はないのか、選択肢に誤解を生みやすくないか、十分チェックしていただきたい。

2.3.3.4 1つの質問で調べるポイントは1つ

当たり前だが、選択肢に異なる種類の回答が入れば回答者もとまどうし、結果もおかしくなる。数を絞り込むという注意点から、1つの質問であれもこれも知りたいと詰め込んでしまわないよう注意して欲しい。
最悪なのは1つのみ回答するべきか、複数回答していいのかが明確でない(通常チェックボックスは複数回答のはずだが質問からはシングルアンサーにすべき)設問もあったりする。
逆にシングルアンサーの設問だが、マルチに答えうる選択肢の場合もある。
また、マルチアンサーにおける選択肢があまりに異なる視点からのものだと、すべて選択したり、1つも選択されない場合もあって、集計しても答えがぼやける可能性が高い。

2.3.4 画像や音声を有効に活用

ペーパーベースではほとんど文字しか使えないが、ネット調査では、やや重くなるものの、音声や画像を使った調査も可能である。この特性を使わない手はない。
例えばパッケージデザインやファッション関係、広告関連などの調査に向いている。
ただし、重くなればそれだけ回答者が少なくなるから、その負担分、高い謝礼が必要になるだろう。


3 ネット調査のまとめ方

ネット上で調査をすれば、回答がデジタル(テキスト)データとして残るので加工しやすい。ペーパーで起きやすい記入間違いやパンチミスが最小限に押さえられる。
後は集計業者に渡してもいいし、アンケート集計ソフトや統計ソフトなどを使って結果の集計と分析に移ることになる。


3.1 分析ツール

自分で分析する場合、以下のようなソフトが販売されている。
アンケート集計ソフトは全般に高額なので、何度もアンケートを行う調査機関や集計業者でなければ委託するのもよいだろう。
→ 秀吉 for Windows/株式会社社会情報サービス/250,000円 Windows95/3.1対応のアンケート集計ソフト。質問数は、最大2,000問、サンプル数はハードディスクの容量に依存。グラフ出力まで可能。
→ エクセル統計97 for Windows/株式会社社会情報サービス/40,000円 エクセルで度数分布表・クロス集計表の作成、基準値・偏差値、統計的推定・検定、分散分析、回帰分析、相関分析、重回帰分析、判別分析、因子分析・主成分分析、時系列分析などの各種統計処理が可能。
→ 電子白書/大野岳夫氏/シェアウェア4,000円 ホームページ上やメールでのアンケート調査票作成から集計まで可能。設問数256まで、回答数もほぼ無限(理論上4億)、文章型回答も処理。多少ウェブ関連の技術力はいるが、低価格なのに充実した機能を持っている。
→ STATISTICA/スタットソフトジャパン株式会社/99,500円〜
STATISTICAの入門版(Base)は統計的手法、分散分析、重回帰分析、ノンパラメトリック分析、グラフ作成及びデータベース管理機能を備えている。
→ SPSS 9.0J for Windows/SPSS/138,000円〜
大規模データベース、データ・ウェアハウス、大量の調査データ、Webからダウンロード可能なデータなど、データの種類に関わらず、分析を可能にし、より良い意思決定のために役立つ情報を提供する統計パッケージ。
→ ASSUM for Windows/日本電子計算株式会社 いくつかのバージョンがあり、100万円前後〜。フルバージョンで999,999件・3,000項目、エコノミー版で5,000件・600項目まで集計可能。簡易版にSimpleCrossというクロス集計ソフトもある。


3.2 分析と結果のプレゼンテーション

アンケートなどで出た定量調査の結果は通常表とグラフ、それにコメントという形が一般的だろうが、同じ様なページが並ぶと、見せる相手にとっても注意すべき点がどこなのかわかりにくい。
うまくデータを加工し、重要なポイントに絞り込んでいくことである。

3.2.1 基本は単純集計

これまで述べてきた注意点に気を付けていれば、単純集計だけでも相当効果的な意見が伺えるはずである。まず属性に偏りがないかどうかをチェックすべきだろう。ネットユーザの場合、20〜30代が多いことが前提になってしまうものの、女性の比率が平均的かどうかなどをバックデータからチェックし、もし極端に足りないようなら再度調査をかけた方がいい場合もある。
その後、質問項目を単純集計して全体の回答傾向をメモしていくとよいだろう。

3.2.2 属性との掛け合わせ方

次にクロス集計となるが、ほとんどの場合2次元クロス集計までで、3次元になるのは年齢層と性別である質問をわけたりする程度であろう。
外部の会社に依頼する場合には、クロスさせる軸が多くなればそれだけコストがかかる場合が多い。もちろん自社で集計ソフトを持っていれば、印刷する前に画面上で有意差があるかをチェックすればすむだろうが、外部に依頼するなら、その質問が本当に男女で差がありそうなものなのか、年齢層によって分ける必要があるかという風に、有意差がでそうな部分はどこかを検討してから依頼した方がよいだろう。


3.3 報告書作成のポイント

アンケートなどで出た定量調査の結果は通常表とグラフ、それにコメントという形が一般的だろうが、同じ様なページが並ぶと、見せる相手(上司や顧客)にとっても注意すべき点がどこなのかわかりにくい。
見せ方を工夫することも重要なポイントである。

3.3.1 まずバックデータと前提条件・仮説を説明

きちんとバックデータと仮説を明確にした後に調査結果を見せないと、思わぬ誤解を生んだり、前提のないまま数字だけが一人歩きしてしまう場合がある。
どんなセカンダリデータを元に、どのような仮説を立て、それを検証するためにこのような調査を行った、その結果はこうであった(仮説の確定や更なる絞り込み・軌道修正など)という筋の通った報告を行うように心がけることである。

3.3.2 定量データはポイントをピックアップ

まず質問項目をある程度分類しておき、そこで目立った結果を書き留めてみよう。
グラフや表の周りにコメントとして添えるだけで、調査結果を一目で把握できるようになるだろう。
更に、世代ごとの時代背景・性格分類などをセカンダリデータからも引用することで、ストーリー性を持たせることができる。
(例えば数年前ポケベルを駆使した女子高生=現在ポケット端末でメールをやりとりする女子大生・OL)

3.3.3 定性データは分類・セグメント化して

定性調査、アンケートにおけるフリーアンサーなどは、人によって180度意見が異なる場合もあり、ただ並べると散漫な結論しか生まれず、いろいろな意見があるという印象を与えて終わりになってしまう。
そんなときはそれぞれの意見をカードなどに書き込んで、それをグループごとに分類してみよう。単純に肯定的・否定的というものではなく、どんな側面から見た意見であるかを分類したり、年齢層によって分けたりする内に、ある分析軸で分類できたりするだろう。
後はそれを縦横2本の十字型分析軸から成る分散グラフにマッピングすることで、セグメント化する事ができる。
しかし、この分散グラフも軸の設定を誤るケースが非常に多く、そこをつっこまれるとこの分析自体が意味のないものになってしまう。別の切り口はないか、もっとしっくりくる軸はないかと試行錯誤していただきたい。


3.4 調査データの公開

調査データをすべて公開してしまうと、競合などから参考にされてしまう可能性はあるが、その概要だけをオープンにすることで、新聞や雑誌で取り上げられたり、ウェブサイトを活性化させたり、次の調査をやりやすくなったりもする。

3.4.1 情報を公開するメリット

調査を行った結果をサイト上で発表するのは、その調査内容が一般的であればそれだけ他の利用者にアピールすることができる。
もちろん調査データをすべて公開する必要はない。しかし、新聞などのメディアへニュースリリースを送ることで取り上げられることも多く、そのサマリーを公表することで、サイトの活性化につながる場合も大きい。
特に一般に興味深い部分の単純集計のみをピックアップすれば十分である。

3.4.2 公開時の注意点

公開すると決まったら、それがきちんと信頼できる調査であったことを示すように、必ず以下の項目は入れておくべきである。
時々見かけるのが、いつ行われたのかも、有効回答数が何人なのかわからず、単に「25%」などと書かれているだけのグラフで、信頼できず、引用もできない調査結果=ムダな情報公開をしているサイトも多い。

3.4.2.1 調査母数

前提として全回答者数と共に、各設問の有効回答数を忘れないこと。
例)グラフには有効回答:354など

3.4.2.2 調査実施場所・対象選択方法

ネット調査の場合には、特にインターネット利用者を前提とするのでそのバイアスを明確化
例)○○ネットのウェブサイト上で公募・インターネットを利用する主婦を対象、など

3.4.2.3 実施時期(期間)

最低何年何月まで、できれば調査実施期間まで
例)何年何月何日〜何日(2週間)など


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