ここでは、法人が自社のサイトを開設するまでの手順と注意点を挙げていく。
ここに挙げた方法のみとは限らないし、併用する方法もある。
すでに企業でウェブサイトを持っている場合にも、別の選択肢を考え直したり、改善するのに役立てていただければ幸いである。
INDEX
1.1 まずウェブで展開する目標を立てよ
企業のウェブサイトの目標としているものがなんなのか、漠然としている企業も多い。
もしあなたの会社がまだウェブサイトを開設していないなら、周りにただ進められて、あるいは周りがみんなホームページを持っていて、なかば脅迫されているような状況だから、という理由でスタートすべきではない。
もちろん昔より簡単に、低コストで開設できるような状況にはなっているが、そこに何の目標・目的もなければ、へたなウェブサイトを開設する必要などないともいえる。
もちろん、かつての多くの企業のように、会社案内だけ、というのも、意味はあるかもしれない。最近は就職する学生も、わざわざ会社案内を郵送してもらうより、その会社のウェブサイトを探すことの方が手軽だからだ。
ただ、それだけにとどめるには、ウェブサイトでできることの可能性は大きすぎる。そこが人事の窓口にも、広報窓口にも、広告メディアにも、カスタマーサポート窓口になり、営業窓口になり、あるいは新たな流通にも店頭にもなりうるのだ。
だからこそ、中途半端な態度で片手間にスタートするべきではない。新製品の開発を始める時や新しい流通変革プロジェクトをスタートするのと同様、最初に目標を定めて、それに見合ったコストをかけることだ。
目標とは、具体的な利益(率)のアップでもいいし、どの程度のサイト訪問者あるいはメンバーを獲得するかとか、現在のしくみをどれだけ変えてどれほど合理化(経費削減)できるか、あるいは新しい販路として利用し利用者(利益)をどれだけ獲得できるかと、これも様々だろう。
目標によっては、1ヶ月で目に見えるかもしれないし、1年たたないとその具体的な成果を見られない目標もある。
ただ、開設しただけでメンテナンスをせずにそれだけでそれだけのメリットをもたらしてくれるとは思わない方がいい。
始めるからには、当然継続して運営し、ニュースリリースや製品の情報を更新したり、ウェブ専任のスタッフやコストをかける部分をよく考慮しなければならない。外部の制作会社に100万円払ったらそれで終わりというわけではないのだ。
すでにとっくにホームページを持っていると自慢げに語る会社も、その運営が果たして目標を持って行われているのか、その効果がコストをカバーしているのか、もう一度確かめてみるべきである。
1.2 コストと売り上げへの直接的・間接的な影響
ウェブのメンテナンスにどれだけのコストをかけられるだろうか?
無店舗販売のように、ウェブでの商売が直接利益と結びつく企業は、そこに広告やPRの為の費用をウェブメンテナンスに投じるのは当たり前である。
では、ウェブで直接利益を上げられない企業はどうだろうか?新規顧客の開拓よりも既存顧客の維持に傾きつつある現代のマーケティングにおいて、顧客サービスの為のコスト(お客様センターやユーザサポート、故障問い合わせ窓口)は拡大しているが、まだウェブに力を入れる余裕がある企業は少ないかもしれない。
なんにせよ、最初からコスト意識はしっかり持たなければならない。ウェブの会社案内に100万円もかけるのは無駄なことだが、結果的に現在の会社の利益を100万円以上上げられたり、経費を100万円以上削減できるのなら、やらない手はない。
費用対効果の計りにくいネットビジネスであるが、現在のビジネスを徹底的に数量化して、それがそのまま来年どうなると予測されるか、そして、ネット上で展開するとどの程度の変化が見られるはずなのかを分析してみてほしい。
その上で、もし当面販促予算からしか予算を捻出できないとしても、その範囲でできることを明確にして、その目標をできる限り達成して次の目標を立ててもよいだろう。
現在FAXを持っていない会社がほとんどないように、ウェブサイトとメールアドレスがない会社がほとんどなくなる時まで、着々とメンテナンスしていくべきものであることを前提にしてほしい。
1.3 管理方法はサイトの場所次第
もしウェブサイトをまだ持っていなければ、サイトをどこに持つかを決めなければならない。これは主に開設までのハード・ソフト・インフラのコストとメンテナンスなどの維持管理のコストが選択の決め手になる。
すでにホームページを持っていても、以下のメリットデメリットを見直してみて欲しい。1年前の状況とはいろいろな点で変わっているのだ。
これらを複数組み合わせる方法もある。弊社では米国にレンタルサーバをおいていて、これをウェブサーバとしているが、自社にも専用線を引き、社内サーバはファイルサーバとメール転送によるメールサーバとして使っている。社内サーバをウェブサーバにもできるが、専用線といってもOCNエコノミー(128kbps)であり、アクセスが増えると通常業務に支障があるし、不正アクセスがあっても社内ファイルサーバへのアタックを回避する意味もあって、このような設定にしている。
1.3.1 自社内サイト(管理者常駐)
自社内に専用のサーバをおいて、そこでウェブサイトを立ち上げるという方法である。ここでは管理も社内の人間を使うという前提である。
1.3.1.1
メリット
・自由なメンテナンスやサーバ機能の拡張が可能
・イントラネットとの共存による社内情報化推進
・自社内のシステム管理者が管理するため社内システムを合理的に活用できる
1.3.1.2
デメリット
・サーバマシンや専用線など開設コスト運営コストとも高い
・国内では専用線のコストが高く、アクセスが増えると増設などの負荷が大きい
・社内技術者の技能に制約される
・不正アクセスによりウェブサーバ以上に社内システムまで影響があり得る
1.3.2 自社内サイト(管理者外注)
自社内にサーバを設置するが、管理は外部の会社に任せる方法である。
1.3.2.1
メリット
・自由なメンテナンスやサーバ機能の拡張が可能
・技術者が社内にいなくてもよい
・イントラネットとの共存による社内情報化推進
1.3.2.2
デメリット
・サーバマシンや専用線など開設コスト運営コストとも高い
・外部管理者ゆえに無駄なコストが発生
・外部管理者のため、社内システム活用に手間がかかる
・国内では専用線のコストが高く、アクセスが増えると負荷が大きい
・不正アクセスによりウェブサーバ以上に社内システムまで影響があり得る
1.3.3 バーチャルサイト
仮想サーバをレンタルする方法。同一サーバを複数の利用者と一緒に使う場合と、1台のサーバを占有できる専用サーバがあり、後者は一部「自社内サイト(管理者外注)」に近い。
1.3.3.1
メリット
・初期の開設コストが少なくて済む。開設時数万円、毎月1万円程度で利用可能。
・独自ドメイン名を取得すれば外部からは差がない。
・サーバのCGIなど付加サービスを利用できる
・社内のシステムと直接つながっていないので不正アクセスの被害が少ない
1.3.3.2
デメリット
・イントラネットや社内システムとの共存がしにくい
・レンタルサーバの性能によりできることに制約がある
・業者によってはサーバ管理程度までしかできない(CGIなどの受託ができない等)
1.3.4 店子型サイト
これもバーチャルサイトの一種であるが、ショッピングサイトのモール(商店街)内の店舗としてサイトを借りる形をとる。
1.3.4.1
メリット
・モール型で別の店で買い物をしに来た顧客が利用する可能性
・ショッピングカート(買い物カゴ)システムを使える
・電子決済が自社投資・開発することなくできる
・モール内に競合がなく、なおかつ人気のあるモールであれば非常に有利
1.3.4.2
デメリット
・出店コストがバーチャルドメインよりも高い
・購入金額の一部をペイバックする場合もある
・自社独自ドメインがとれない場合が多い
・競合が出店していると出店できない・もしくは利益に影響する
・独自のショッピングシステムやサービスを作れない
1.4 ドメイン名は社名・店名以上に慎重さを
企業で本格的にウェブを利用しようとするなら、一般のプロバイダーの後に自社名が付く「www.provider.ne.jp/~company/」といったサイト名は、少なくとも自社のサイト名を覚えてもらうつもりはないと言っているようなものである。
管理費など年1〜2万円程度であり、大きな負担とはいえない。サイト名は早い者勝ちだから、登録だけでもしておいた方がいいだろう。
1.4.1 CO.JPか海外ドメインかの決定
CO.JPは日本の企業で取得可能なドメインである。ネットワーク関連企業(サービス・個人でも可)なら「ne.jp」、そのほか地域ドメインなどもあるが、やはり通常の企業のホームページならco.jpが一般的だろう。
ただしCO.JPは通常1社1つに限定されるから、自社のサイトとは別に通販専門サイトを立ち上げるならne.jpをとるか、海外のドメインをとることになる。
レンタルサーバなら代行取得してくれる業者があるが、国が限られる(米国なら.com/.netなど、そのほかトンガなら.toなど)場合もある。
1.4.2 ドメイン名決定
もちろん自社名に関連していた方がいいが、なんにせよ覚えやすいことが第一である。
アルファベットとハイフン・アンダーバーしか使えないが、だからといってムリに英語にする必要もない。「ABC広告社」を「ABC-advertising」などとつけるより、ABCだけとか、ABCADなどとすることで日本人に覚えやすくすることが大切である。(もちろんまだ誰も取得していないドメイン名なら、だが)
会社の略称同様、よく考えて、そのドメイン名が取得されていないかをチェックすることだ。
1.4.3 候補ドメイン名のチェック
日本のドメイン名(co.jp/ne.jp等)なら「JPNIC」のサイトで、米国(com/net)なら「INTERNIC」のサイトで確認できる。また、トンガ共和国(to)は「TONIC」、ニウエ島(nu)は「NUNIC」で調べられるので、探してみるといいだろう。
JPNICのドメイン名検索WHOIS
INTERNICのドメイン名検索WHOIS
トンガTONICのドメイン名検索WHOIS
ニウエ島のドメイン名検索WHOIS
アスカネット:米国・日本・トンガ・ニウエ島のドメイン名を横断チェック
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